研究課題/領域番号 |
07278242
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
赤川 公朗 杏林大学, 医学部, 教授 (80129303)
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研究分担者 |
藤原 智徳 杏林大学, 医学部, 助手 (90255399)
藤野 一郎 杏林大学, 医学部, 助手 (30265764)
九島 洋一 杏林大学, 医学部, 助手 (30255400)
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キーワード | HPC-1 / 神経可塑性 / 海馬 / LTP / 最初期遺伝子 / カイニン酸 |
研究概要 |
神経特異蛋白質HPC-1が海馬の長期増強現象(LTP)に関与するという仮説を明らかにする為の第一段階として、神経細胞に与えられた興奮刺激によりその遺伝子発現が変化するか否か検討した。方法はラット個体及び培養細胞を用いて、海馬における伝達物質として知られるグルタミン酸の受容体アゴニストであるカイニン酸(KA)を投与した後、HPC-1mRNA量の経時的変化を発色法によるin situ hybidization(ISH)法及びノザンブロット法で検討した。ISHは顕著鏡像を画像解析装置に取込ませ定量する方法を確立した。その結果in vivoではKA投与後、1時間から12時間にわたりmRNA量が減少することを見出した。この減少は海馬の顆粒細胞層よりも錐体細胞層領域に顕著であり、部位差を認めた。幼若ラットより得た培養海馬神経細胞でのKAの効果を調べると、投与後30分以内にHPC-1mRNAが減少するが、2時間後には正常に復することが明かとなった。これらの結果は、HPC-1mRNAが強い興奮刺激により最初期遺伝子(immediate early gene、 IEG)様に急速に変動することを意味していた。しかし既知のIEGが刺激に対応して発現が増加する(up regulation)のに対して、HPC-1遺伝子は抑制される(down regulation)される点でユニークであった。またこの遺伝子発現の抑制には、ヂブチルcAMPを投与すると減少すること及びカイニン酸投与によりin vitroでのcAMPが増加することから、cAMP-protein kinase A系が仲介していることが推定された。モルモット海馬の切片におけるLTPではHPC-1遺伝子発現は抑制される傾向が認めたが、更に例数を増やして検討することが必要であった。
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