内向き整流特性と高いカルシウムイオン(Ca^<2+>)透過性を示すAMPA型グルタミン酸受容体(H型AMPA受容体)の機能的意義を、特にシナプス伝達機能の可塑性変化との関連に重点をおいて明らかにすることが本研究の目標である。本年度は、H型AMPA受容体をもつニューロンのラット海馬内での分布とこの受容体が興奮性シナプス伝達を果たす役割について検討した。 1)II型AMPA受容体をもつニューロンの海馬内での分布 スライスパッチクランプ法により、ラット海馬切片中のニューロンを対象としてAMPA受容体の電流・電圧特性とCa^<2+>透過性を調べた。CA1、CA3錐体細胞、歯状回顆粒細胞はほぼ選択的にI型AMPA受容体のみを発現していた。一方、II型AMPA受容体のみを選択的に発現しているニューロン(II型ニューロン)は非錐体細胞で、海馬の諸領域に分布しており、非錐体細胞の25%(39/156個)がII型ニューロンであった。 2)II型AMPA受容体が興奮性シナプス伝達に果たす役割 現在までにこのシナプス伝達に関与していることが証明されているのはI型AMPA受容体のみであり、II型受容体の関与については知られていない。そこで、上記のII型ニューロンで局所刺激で生じるEPSCにII型AMPA受容体が関与するか否かを調べた。whole-cell voltage-clamp法によりII型ニューロンからEPSCを記録すると、これらは時間経過の速いAMPA成分と遅いNMDA成分から成ることが解かった。次に、NMDA成分を薬理学的に除去してAMPA成分の電流・電圧特性を調べたところ強い内向き整流特性を示した。従って、II型AMPA受容体はこれらを発現しているニューロンで興奮性シナプス伝達を担うことが明らかになった。
|