申請者らは、既に大脳皮質ニューロンの初代培養系において、キナーゼ阻害剤であるK-252bが、シナプス形成を阻害すること、その際、[^<32>P]ATPの取り込みで見たリン酸化の阻害が数個の蛋白質で見られること、その内の一つがMAP1Bであることを明らかにしている.本年度はキャピラリー高速液体クロマトグラフィーにエレクトロスプレー質量分析計をオンラインで結合したLC/MS法を用い、MAP1Bのリン酸化部位を詳細に解析した.試料は大脳皮質ニューロンの初代培養を用いSDSゲル電気可動を行いMAPIBに相当するバンドを切り出し、SDS存在下、直接ゲル片をプロテアーゼ処理して得られたペプチド混合物を用いた.その結果、従来その寄与が示唆されていたカゼインキナーゼIIによるリン酸化部位以外の部位で、8ヵ所以上もMAP1Bがリン酸化されていること、これらの新しく見出されたリン酸化部位が、いずれもリン酸化部位の直後にプロリンが存在することが明らかとなった.このことから、最近注目を浴びているMAPキナーゼやCdk5キナーゼなど、いわゆるプロリン指向性キナーゼが、MAP1Bをリン酸化し、そのリン酸化がシナプス形成に必須であると考えられる.MAP1Bは神経突起伸長の初期の段階に重要な役割を果たしていると考えられていることから、突起伸長のシグナスを伝えるMAPキナーゼの重要なターゲットである可能性がある.同様に成長円錐の主要蛋白質であり、Cキナーゼの主要基質として知られているGAP-43の翻訳後修飾を解析した結果、GAP-43もプロリン指向性キナーゼでリン酸化され、そのリン酸化にはMAPキナーゼ、Cdk5以外のプロリン指向性キナーゼによりリン酸化されていることが明らかとなった.
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