研究概要 |
線条体投射細胞の膜電位は、一定した二つの膜電位の間を移り変わって(シフト)している。一つは、-80から-85mVの電位(Downstate)で、もう一つは、-60mVの電位(Up state)である。Up stateからのみスパイク発射が起きる。本研究では、基底核の機能を理解する上で重要と考えられる。投射細胞の膜電位のシフトの性質を調べ、その成因を考えた。ラットの線条体の細胞から細胞内記録を行った。記録している細胞の電位依存性電流を止めるために、電極内に次のような薬をいれた。(a)QX314(Naコンダクタンスを抑える)(b)D890(Caコンダクタンスを抑える)(c)セシウム(Kコンダクタンスを抑える)。最初に、脱分極がNaやCaによる電位依存性電流によるのかどうか調べた。QX314とD890を細胞内に入れ、NaコンダクタンスとCaコンダクタンスを抑えても、Up stateは影響を受けなかった。Up stateでは外向き整流が強く、Downstateでは内向き整流が強かった。細胞内にセシウムを入れて外向き整流Kコンダクタンスを止めると、Downstateはほとんど影響を受けなかったのに、Up stateは一定でなくなり、更に大きな脱分極が見えるようになった。次に、セシウム、QX314、D890を細胞内に入れ、K,Na,Caの電位依存性コンダクタンスを止め、Up stateの電位がどうなるかを調べた。その結果、Up stateは-10から-20mVになり、皮質からのEPSPの反転電位の値とほぼ同じになった。これらから、Up stateは、皮質由来のEPSPで作られており、その大きさは飽和しているが、Kによる外向き整流コンダクタンスによって、一定の電位にクランプされていると考えた。
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