研究概要 |
蛋白質の立体構造の構築原理は、将来の高効率触媒や病因の解明および薬物デザインのためには必ず解き明かさなければならない課題である。その中で立体構造を想定し設計されたモデルペプチドおよび蛋白質分子(デノボ設計)を用いた立体構造の安定性・ダイナミックス・折れたたみ機構に関する研究が盛んである。我々は設計モデル蛋白質の立体構造特性および形成機構を調べることを目的として、設計蛋白質中に化学合成法の利点を生かした蛍光性の人工アミノ酸を導入し、その側鎖クロモフォアの相互作用をUV,CDおよび蛍光指標とした立体構造の特徴づけを行い成果を得た。超2次構造形成モチーフとして、両親媒性の二次構造を利用し、疎水性コア中央部に一対のピレニルアラニンプローブを導入した2α-および4α-ヘリックスやβ-構造からなるモデル蛋白質を合成した。水溶液中において、これらの蛋白質は非常に安定な二次構造を形成した。さらにピレン基間の励起子相互作用をCD観測することにより、立体構造の幾何学的特性を反映したプロービングを行うことに成功した。つまり、2α-ヘリックス構造は右ねじれ配向、4α-ヘリックス構造では右ねじれ配向のヘリックスどうしの折れたたみ方に時計回り・反時計回りの自由度があるので設計蛋白質のモルテングロビュール性がさらに高いこと、2つのβ-構造の配向は天然体と同じ左ねじれであること等、簡単なCD・蛍光測定のみで側鎖領域(三次元構造)特性を評価することに成功した。また2α-ヘリックス中に2個のポルフィリンを結合させた蛋白質も合成した。本ポリペプチド中においてやはりポルフィリン分子は高い不斉性をもって分子内配向していた。さらに本ペプチドは分子間会合し、20本以上のヘリックスからなるポルフィリン-ペプチド超分子集合体形成していることも明らかになった。
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