真核生物における複製開始とその制御機構において、複製開始点を含む核内蛋白質複合体が重要な役割を果たしていると考えられる。分裂酵母染色体の複製開始点の構造を明らかにするために、分裂酵母第II染色体の約100kbの領域から、自律複製能をもつ断片(ARS)を5種類分離し、それらのうちの3つが染色体上でも複製開始点として機能することを確認した。染色体上のars2004領域とARSプラスミド上では、ほぼ同一の限定された部位から複製が開始することを確認した。 次にARS2004の複製開始に必要な最小断片として940bpの断片を分離し解析したところ、その内部の50-100bpからなる3つの領域が必須であり、DNAの片側鎖にアデニンあるいはチミンが連続する塩基配列が多くみられた。必須領域内に8bpの塩基置換を導入した解析により、AAAAあるいはAAAT配列が重要であると結論した。分裂酵母複製開始点の特徴として、必須領域以外にもAあるいはTクラスターが繰り返し存在し、複製に寄与することが明らかとなった。必須領域はpoly(A)により機能的に置き換えることができるが、poly(A/T)あるいはpoly(AAAC)では置き換えられないことが判明した。必須領域の機能は、単に二重鎖を開裂しやすいことではなく、複製開始反応に関与する核蛋白質が塩基配列あるいはDNA構造特異的に結合する部位ではないかと考えられる。今後、複製必須領域に結合する蛋白質の探索とともに、複合体に含まれる可能性のあるORCホモログ、MCM蛋白質の関与を解析したい。
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