研究概要 |
我々が2-ハイブリッド法で同定したRanBP2の全一次構造を決定するための全長のcDNAをクローニングした結果、3,224アミノ酸からなる蛋白質がコードされていた。RanBP2は複数の特徴的な領域から成り、N末側のleuicine rich領域、既知のRanBP1との相同領域を4個、Zn^<2+>フィンガー領域、C末側にはサイクロフィリンとの相同領域を持つ。また、核膜孔複合体(NPC)蛋白質に特徴的な反復アミノ酸配列、XFXFGリピートを分子全体に渡って含み、Zn^<2+>フィンガー領域はNPC蛋白質の一つNup153と同じモチーフである。 抗体を作成してWestern Blottingを行なうと、HeLa細胞抽出液及びラット肝核膜画分中に、RanBP2の予想される分子量358KDaに対応するバンドが認識された。Ranに対する結合能をオーバーレイアッセイで調べると、HeLa細胞抽出液から免疫沈降したRanBP2、或いは大腸菌で発現したRanBP1相同領域は、Ran・GTPγSとは結合するがRan・GDPβSとは結合しなかった。 間接蛍光抗体法で細胞内局在を検討すると、HeLa細胞ではNPC蛋白質に特徴的な染色像punctate patternが核膜上に観察される。更に免疫電顕では抗体がラット肝核膜分画中でNPCのcytoplasmic fibrilをラベルにした。そこでRanBP2が核輸送に機能している可能性をin vitroの核輸送系を用いて検討した。in vitro系に抗RanBP2抗体を加えると、核局在化シグナル依存性の蛋白質核移行が抗体により用量依存性に阻害された。 以上の結果は、RanBP2がNPCのcytoplasmic fibrilに存在してRan-GTPと特異的に結合する蛋白質であることを示し、蛋白質の核移行に機能的に含まれる分子であることが示唆された。
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