研究課題/領域番号 |
07301001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柏原 啓一 東北大学, 文学部, 教授 (30008635)
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研究分担者 |
座小田 豊 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (20125579)
竹内 修身 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (30117577)
本間 謙二 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80111186)
宮武 昭 中央大学, 文学部, 教授 (70004091)
須田 朗 中央大学, 文学部, 教授 (00004078)
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キーワード | 主観性 / 相対主義 / 理念の衣 / パースペクティヴィズム / 究極の価値 / 価値転倒 / 自由 / 神 |
研究概要 |
今年度は近・現代に共通するテーマに焦点を当て、諸テーマに関連して近代科学の諸前提を検討した。テーマはa)懐疑と真理、b)意識と自由、c)神と自然、d)実存とニヒリズム(価値転倒)であった。いずれの場合も同時に主観性理論の展開と相対化現象の関わりについて討議を繰り返した。その中で特に確認されたのは、絶対的に確実な客観的認識を目指す営みが主観性の自己確証のそれと根本的に結びついているということ、真理・自由・神といった「理念」の主観的な性質の故に、これらがいずれも相対性を免れ得ないものだということである。そうした「理念の衣」はもちろん、それを取り去った生においても、ニーチェ的なパースペクティヴィズムが顔を覗かせるのである。 究極の価値、絶対的な確実性、不動の根拠、永遠の原理--これまで人々の目標として求められてきたものは、超越論的哲学の探求を経た後では、主観の「理念・理想」として、主観の営みそのものを追認的に保証する装置に他ならないことが明らかになった。確固不動の絶対的な真理なるものは、人間理性にはその存在すら厳密には確認するすべのない、単に「要請された理念」の一つにすぎない。とすれば、たしかに、こうした確認によって相対主義が惹起されるのは必然である。様々な人々が様々な「究極の価値」を唱えていることからすれば、結局は互いの「相対性」を容認するほかとるべき方法はないと言うべきである。問題は、したがって、相対主義の意味を重ねて問うことによってしか解れてはこない。その手がかりの少なくとも一つはやはりなんと言っても、主観性の哲学の可能性を訪ねるところに求められねばならない。その意味では、われわれの共同研究は、われの提示した課題の重要性を改めて確認するに至ったのである。この探求は、研究分担者全員が今後とも引き続き担っていく所存である。
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