研究課題/領域番号 |
07301005
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応募区分 | 総合 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 新二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30114440)
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研究分担者 |
深澤 英隆 一橋大学, 社会学部, 助教授 (30208912)
磯前 順一 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (60232378)
池澤 優 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90250993)
島薗 進 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20143620)
市川 裕 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20223084)
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キーワード | 正典 / 聖典 / 雅歌 / 宗教現象学 / 神秘主義 / 孝経 / クルアーン / エッダ |
研究概要 |
世界の諸宗教文化の形成において聖典の果たした役割は極めて大きい。聖典には文書化されたものと口承されてきたものとがあるが、その両方を研究することによって、諸々の宗教的観念や思考が人々の意識や生活に浸透していった様をうかがうことが可能である。これまでの聖典研究においては、テクスト批判に基づいて聖典の形成過程を明らかにすること、あるいはテクスト解釈に基づいて観念論的思想史を研究することが中心となってきた。一方で、聖典の受容形態、すなわちテクストが社会的文脈のうちに位置づけられる様態を明らかにするという視点は軽視されてきたといえる。本共同研究では、民衆の生活倫理や価値観に対しての聖典の影響という視座を確保しながら、思想史と社会史の融合をはかる。ここに、各宗教文化における聖典形成と聖典解釈の方法の総合的把握を目指す。さらに各宗教文化における聖典解釈のありかたを比較検討することによって、キリスト教文化圏を中心に作られ通用してきた聖典概念そのものを再検討し、その拡充を試みる。聖典一般をめぐる議論をも整理し、その妥当性を問うこととなる。 こうした問題意識を共通の基盤として、本年度は、前年度におこなった基礎的な資料収集・研究・議論を継承しつつ、各研究者がそれぞれの分野における具体的研究を進行させた。その報告を夏冬の全体会合などにおいて報告し、討議をおこなった。池澤によって中国の「孝経」を題材として祖先崇拝や倫理の問題が、鎌田によってイスラームのコーラン解釈の問題が、深澤によって近代ドイツの神秘主義的民族運動における聖典形成と政治化の問題が、鶴岡によって中世から近代にかけてのヨーロッパとくにスペインの神秘主義における聖典の権威と解釈の変遷の問題が論じられたほか、聖典論一般についても金井や磯前によって議論が提出された。このように、多様な地域・時代にわたって、聖典の形成とその社会への浸透、宗教思想と社会規範・倫理との関係、聖典解釈の枠組みそのものの変化などの多くの重要な問題が具体的に検討されつつある。来年度の成果発表にむけて、このような方向で研究が着実に進行している。
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