研究課題/領域番号 |
07301006
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研究種目 |
総合研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 正英 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90083708)
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研究分担者 |
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 助教授 (70212066)
黒住 真 東京大学, 教養学部, 助教授 (00153411)
窪田 高明 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (80195502)
西村 道一 茨城大学, 人文学部, 教授 (30114599)
菅野 覚明 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助教授 (70186170)
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キーワード | 日本論理思想 / 善悪 / 勧善懲悪 / 仏教 / 神 / 仏 / 天 / 文明 |
研究概要 |
本研究は、日本人の論理思想を形づくる基礎的諸範疇のうち、特に善悪に関する諸概念を幅広くとりあげ、それぞれの概念を指し示すものの内実・歴史的生成課程・相互間の関係などの検討を通じて日本人の善悪観を総合的に明らかにし、その道徳的思考の枠組みの一端を解明することを目指している。 以上の研究目的に沿い、研究初年度に当たる本年度は、(1)古代から近代にわたる思想資料の中から、善悪概念に関わる用例・解釈例を幅広く収集し、(2)その資料を基に各分担者が、担当する個別研究対象領域に即して分類・整理・解釈を試み、(3)定例及び合宿の研究会等において、報告・討議を繰り返した。またこれとは別に、(4)本年度の重点領域として、近世の「勧善懲悪」文学と、その流れを引く近代の大衆文学の善悪観をとりあげ、その分析及び位置づけを試みた。 その結果得られた知見及び成果として、以下の事柄が挙げられる。 (1)伝統的テキスト文脈の中で「善悪」という言葉が、第一次的な用例の検討については、多くの資料が収集され、多くの用例が近代的な予断の通用しない固有の意味を持っていたことが明らかにされている。 (2)これまで、論理思想史テキストとして日の眼を見なかった膨大なテキスト群(特に大衆文学作品)が発掘され、そこにおける善悪概念が精査されつつある。またこれまで近代の洋楽的世界観の背後に隠されていた大衆の論理感覚や生活の知恵が論理思想史的に位置づけられつつある。 (3)善悪をめぐる思考の枠組みには、「神」「仏」「天」「文明」というほぼ通時代的に四つの核があり、ことに従来日常道徳の枠組みと混同されがちであった仏教の善悪観が日本思想の中にきわめて深く浸透しており、そのことを軽視する場合に起きた従来の思想テキストの読みの混乱が多く指摘され、今後の思想研究に一つのあるべき方向を示唆した。
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