研究課題/領域番号 |
07301007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大林 信治 大阪大学, 人間科学部, 教授 (60047462)
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研究分担者 |
石田 明文 京都大学, 総合人間学部, 教授 (20121808)
山本 雄一郎 神戸商科大学, 商経学部, 教授 (50094529)
生越 利昭 神戸商科大学, 商経学部, 教授 (30094527)
山中 浩司 大阪大学, 人間科学部, 助教授 (40230510)
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キーワード | 近代社会 / 観察 / 視覚 / 社会思想史 / 科学史 / 文学史 / 美術史 |
研究概要 |
今年度は、これまでの報告を総括する形で、古典近代における自然科学・社会科学における「観察」「視覚」の役割について生越・大林が、19世紀の哲学・思想における「観察」「視覚」の役割について石田・山本・細見が、また文学・思想における「光学」「光学器具」の役割について奥田・三谷が、医学における「観察」「診断」「計測」の役割について山中が、演劇と政治における「見る者」と「見られる者」について米原・Schauweckerが報告をまとめた。また、国際美術館・学芸員・尾崎信一郎氏、京都大学・総合人間学部・岡田温司氏の協力を得て、モダニズム美術における「視覚性」の突出した役割、ルネサンス期における「遠近法」の成立について重要な報告を受けた。個別の実証研究と平行して、問題の一般的で理論的な側面の検討も行われた。検討の対象は、E・パノフスキー、A・サイファー、L・マンフォード、M・マクル-ハン、M・フ-コ-、R・ロ-ティー、J・クレーリーに及び、複数の分野を横断する問題構成について検討が重ねられた。これらの活動を通じて西洋近代社会における「観察」と「視覚」の突出した役割について以下の新しい知見を得ることができた。(1)近代的な「観察」ないし「視覚」の成立については、歴史的にみても、領域的に見ても必ずしも相互に整合性をもたない複数の競合する議論が存在すること。(2)個別の実証研究にもとづけば、新しい「観察」や「視覚」のあり方は、複数の時代と分野に由来し、かつ、新しい技法や技術や制度(遠近法、望遠鏡、顕微鏡、劇場など)と密接に関連していること。これらの知見は、「近代社会と観察」についての一般的モデルの中の特に「技術(テクノロジー)」の問題を重要な要素として含む必要性を明らかにした。なお、本研究の成果は平成10年度中に『視覚と近代-観察者の諸相』として一般に刊行される予定である。
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