研究課題
本研究の主題は階層と職業の関係にあるが、それが前近代社会においてはさらに身分が加わり三者の関連が問題となる。したがって前近代社会研究班においては、ひとつは前近代特有の労働観の形成・構造が究明の対象とされ、第二に具体的には聖職者と法学者という二つの職業身分が分析対象として取り上げられた。とくに第二の点に関連して中世における大学の特有の役割に留意した。これに対して近代社会研究班では、ドイツに関しては知的専門職とともにユンカー(農業企業家)・手工業者を、イギリスに関してはジェントリ-(地主)とユダヤ人職業を、フランスに関しては聖職者とともに中産階級の職業を、アメリカに関しては知的専門職とともに南部の農業企業家を、さらにロシアに関しては貴族とエリート職業との関連を究明することに努めた。こうしたなかで、特に知的専門職に関しては、ドイツ・イギリス・フランス・アメリカ・ロシアそれぞれにおいて独自な特色があり、その根底にはそれぞれの国におけるエリート観の相違が伏在することが指摘された。総じて階層と職業(前近代においてはさらに身分が加わるが)という視点から歴史分析を行うことは、それぞれの時代・国における社会・文化の特質をとらえるうえで「管制塔的地点」に身をおくようなものであることが痛感された。
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