研究課題
基盤研究(A)
本研究は、階層と職業の関係の解明を主題とするものであるが、前近代においては、さらに身分(制)をふくめての三元的関係を追求しなければならない。こうした基本的観点からの三年間の共同研究は、時代・職業の種類いずれにおいても今後埋めるべき空白部分を残さざるをえなかったが、身分・階層・職業の相互関係を歴史的に明らかにするうえでの基本的な見通しをつけることはできたと思われる。その際に、本共同研究で取り上げ得た個別的テーマを挙げておけば以下のようである。古代に関してはギリシアの労働・職業観を、中世に関しては労働観とともに司教と法学者を検討対象とした。近代に関しては、ドイツの教養市民層・ユンカー・手工業者・ジャーナリストを、イギリスのユダヤ人・ジェントリを、アメリカのプランター・ジャーナリストを、フランスの聖職者・中産階級を、ロシアのインテリゲンツィアを、それぞれ検討対象とした。そして形成史・意識・行動様式などについて解明に努めた。こうした個別的検討のうえに、前近代においては身分・階層・職業の三元的関係を、近代においては階層・職業の二元的関係のあり様について認識を深め得た。ただ全体としてエリート的階層に比重がかかり、非エリート階層については、今後の課題とされた部分が多かったことは言っておかねばならない。
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