研究課題
基盤研究(A)
本研究は院政期国家仏教体制のあらたな中心として形成された「御室」の第五代仁和寺親王として、後白河院政期に活動した後白河皇子守覚法親王(1150〜1203)について、その遺した多くの著述を考証することを通し、古代から中世の転換期に果した御室法親王およびその文化圏の宗教文化上の役割および意義を探究することを目的とした。そのため、仁和寺に伝存する聖教文献の中から、守覚の著作を調査し文献学的研究を行った結果、事相書を中心に膨大な守覚自筆写本が各種にわたり出現した。しかも、守覚の作成になる各種目録も併せて見いだされ、特に『密要鈔目録』とそれに対応する自筆本を中心とした事相聖教が、網羅的かつ大量に検出された。体系的に守覚著作が遺存することが明らかになり、更に自身による"御流"法流相承と形成のプロセスがそれらによって具体的に解明された。この文献学上の発見を通し、当時の寺院一宮廷の諸道・諸流を統合する中世的王権の宗教的側面の主催者としての御室法親王の活動が、歴史上明確に定位され、その実態を詳細に分析・検討するための基礎を築いた。この成果をより正確かつ網羅的に検証する為の更なる調査が必要であり、守覚の聖教の形成に関する文献批判の作業が行われなくてはならない。そして、所期の仁和寺文化圏の復元的考察に向けて、より多くの分野の研究者と連繁して研究を展開するつもりである。
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