研究課題
基盤研究(A)
アジアの諸地域(インド・中国・日本等)に広がった仏教は、それぞれの地域に深く根差し、その地域の思想文化と密接に交渉を持ちながら発展してきた。それ故、その研究のためには、仏教学の専門研究者だけでは不十分であり、仏教外の思想の研究者やまた歴史などの他分野の研究者と共同で行なうことが不可欠である。このような観点から、かねてより研究代表者はさまざまな共同研究の試みを行なってきた。そのうち、本研究と関わる主要なものは、『碧巌録』の現代語訳研究会と日本仏教研究会の活動である。今回の総合研究は、この二つの研究会を母胎として、東アジア、およびその源流としてのインドにおける仏教と他の思想宗教との交流の総合的な研究を目指した。その成果は別冊の報告論文集の通りであり、中国に関しては、唐・宋代を中心として、儒仏道三教が極めて密接に関係し、それが清代にまで及ぶことが明らかにされた。また、韓国を中心に、東アジア世界において華厳思想が重要な位置を占めることが明らかにされた。日本に関しては、特に神仏の習合が著しく、さらには陰陽道や武士道なども関係することが明らかになった。また、日本独自の仏教思想として、天台におけるさまざまな模索、特に本覚思想などに特徴が見られることが明らかにされた。報告論文集の第2部は『碧巌録』第31-100則の現代語訳である。『碧巌録』は宋代における典型的な禅文献であるが、言語的にも思想的にも難解で、仏教研究者と中国思想研究者の協力によって初めて解明されるものである。今回の分は先に発表した第30則までの現代語訳に続くもので、これをもって『碧巌録』全体の現代語訳がひとまず完結したことになり、今後さらに内容的な研究に進む緒となるものである。
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