研究概要 |
本研究グループは,共同研究者の研究推進ならびに報告書作成に当たって、数回にわたり研究会を開き、発表および討議の場をもった。また、外部から藤本浄彦氏(佛教大学教授)に「浄土教の近代化をめぐる諸問題」という題の発表をお願いした。 研究会に際しては、John B.Cobb,Jr氏(クレアモント大学院名誉教授)およびGordon D.Kaufman氏(ハ-ヴァード大学神学部名誉教授)によって提起された問題を念頭に置いて、「浄土および阿弥陀仏の非神話化」に関する考察を中心に行った。研究報告書にはこの二名のキリスト教神学者が当研究のために特に準備してくれた論文を付録として付け加えたが,それは我々の研究成果と密接な関係があるために彼らの立場を見通せるようにする必要があったからである。 以下に研究報告の概要を記しておく。 まず、秋本勝氏は、浄土教を仏教史という大きな文脈の中に位置づけて、仏教の伝統における継続的発展として促えようとしている。小山一行氏は,浄土教の伝統の中での浄土の概念の発展に注意を向け、それをブルトマンの非神話化の概念と関係づけようとしている。中川正法氏は,初期仏教の「念死」(死の瞑想)の実践と浄土との特定の関係を扱っている。以上の3名の研究報告は内なる伝統という繋がりのなかにある。 それに対して、残りの3名はキリスト者と仏教者との対話という繋がりのなかにある。まず、立川武蔵死は、ティリッヒの「存在」に対する強調と関係づけて仏教のもつ世界観に関する問題点を提示している。廣田デニス氏は、現代社会がまさにその証拠となるような宗教的真理の多元性という観点からユニークな真宗理解の立場を論じている。最後に、横田俊二は、ホワイトヘッドやハートショーンが生み出したプロセス神学の影響を明らかに受けている、浄土と阿弥陀仏に関する概念を発展させようとしている。
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