研究課題
九州南部(宮崎県・鹿児島県・沖縄県)の仏教美術と媽祖神像の調査を行なったところ、九州における仏教美術(宗教美術)の極めて興味ぶかい遍在と偏在の状況が明確となった。それは、たとえば、宮崎県下には中央様式(院派系仏像・慶派系仏像)の仏像と地方様式の仏像とが混合して遍在し、鹿児島県下においては廃仏運動の結果、仏教美術の現存作品が少ないものの中央様式(院派系仏像)と地方様式の仏像とが併存する一方、東アジア(中国南部)にみられる媽祖神像が偏在しており、さらに涅槃図像や仏伝図において中央様式や東アジアの特異な図像をもつ作品も偏在しており、注目される。沖縄県下では第2次大戦の戦災による文化財損失が大きかったものの、現存する梵鐘により、鋳物師の本拠地の偏在、鋳造年代の偏在などが指摘され、沖縄県における琉球の仏教美術の特殊性を反映している。以上のことから、九州南部、とくに鹿児島と沖縄における仏教美術は、日本と中国、東アジアの文化交流のなかで、国際的な位置にあったことが知られ、今後、全く新しい視点からの考察が強く望まれる。
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