研究課題
総合研究(A)
今年度の研究の進展状況については、鈴木俊一氏(前東京都知事・現自治体国際化協会名誉顧問)に対するインタビューを8回、後藤田正晴氏(元官房長官・現衆議院議員)に対するインタビューを4回実施したことに加えて、下河辺淳(元国土庁次官)、西広整輝(元防衛庁次官)、楠田実(元佐藤栄作首相首席秘書官)、岡崎久彦(元駐タイ大使)各氏にも1回ずつインタビューを行ったことが主たる成果である。後者の4名については特定の重要政策、すなわち国土政策、日米安全保障政策を選定し、多角的聞き取りを試みたものだが、前者の2名については、特定の有力者に的を絞り、その対象者から継続的、集中的にインタビュー実施した結果、新たなる知見を得ることができた。例えば、戦前から戦後にかけての官僚機構における人事運営や意志決定の手法、戦後占領期における内務省解体の経緯、内務省ないしその後継行政組織が行った様々な改革の過程とそれに対する省内外の考え方、などが主要なものとして挙げられる。特に、内務省はなぜGHQの指令に先駆けて制度改革を行おうとしたのか、そしてその際の基本的な問題とそれへの対応姿勢がどのようなものであったのか、制度改正はいかなる思想と手続き的問題を抱えながら展開されたのか、などの点に関して実務責任者の立場から重要な情報がもたらされた。このような継続的インタビューをより効果的に実施して行くために、より迅速で正確な速記録を用意し、数多くの一次・二時資料を予め準備することにより、インタビュー前後の論点整理や質問項目の検討に役立てた。課題は残されているものの、全体として見れば本プロジェクトは着実に成果を挙げつつあり、基礎研究としての性格から見ても意義のある進展を示していると考える。