本研究は、我が国におけるゾーニングの代表である用途地域に焦点を当て、その変更、特に強化がどのような場合に行われているかを明らかにし、またそれに対する財産権補償の考え方を考察したものである。 まず東京都(全域)、神奈川県(市部のみ)について昭和48年から平成2年までの全ての用途地域の変更事例(計10924件)を調査し、(1)緩和と強化の状況(2)用途・容積からみた変更の特徴と市街地の状況によるパターン分類、(3)変更と他の都市計画制度の適用との関係、を分析した。その結果、緩和に比較して強化は極めて少ないこと、変更のパターンは数種類に分類されること、変更には他の都市計画事業が少なからず関わっていることが明らかにされた。 一方、財産権の補償に関しては、ゾーニングの先進国米国の文献調査から、ゾーニングの変更は自治体のポリスパワーに基づくものであり、基本的には財産権補償の必要性がないことが示された。我が国においてもゾーニングの変更に財産権の補償は必要ないという原則は成立するものの、事例調査結果からみると現実にゾーニングの強化は極めて限定的な状況でしかなされておらず、我が国ではゾーニングの強化(すなわちダウンゾーニング)を行う際の現実的な手段として、間接的な財産権補償が必要とされる場合があることを示唆し、そのような場合の間接的な財産権補償の手段として、各種の緩和型都市計画制度の適用を検討した。 今回の研究では、ゾーニング強化の条件としての市街地の局地的な状況のみを取り上げたが、今後の課題としては、社会・経済的なマクロ条件との関係の検討があげられる。
|