地球表層環境における物質循環メカニズムの解明

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07304044
• 研究種目: 総合研究(A)
• 研究機関: 慶応義塾大学
• 研究代表者: 鹿園 直建 慶応義塾大学, 理工学部, 教授 (10011751)
• 研究分担者: 柳澤 文孝 山形大学, 理学部, 助教授 (00239807) ; 清水 正明 東京大学, 総合研究資料館, 助手 (50162714) ; 井上 厚行 千葉大学, 理学部地球科学科, 教授 (30150270) ; 中田 正隆 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (80180305) ; 本間 久英 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20091928)
• キーワード: 熱水系 / 背弧海盆 / 熱水変質 / CO_2循環 / 環境変動 / 同位体 / 地下水 / バクテリア

研究概要

本年度は,地球表層環境における物質循環のメカニズムを明らかにするために,主としてはフィールド調査に基づいた水/岩石反応に関する研究を行った。具体的には以下の項目に関する研究を行った。
(1)我国に特徴的に存在する黒鉱鉱床地域における水/岩石反応、熱水変質に関する研究,(2)鉱脈鉱床の硫黄同位体の研究,(3)低温の水/岩石反応及びこの時のバクテリアの役割である。(1)に関して特にくわしい研究を行った。特に火成岩、堆積岩の鉱物同定、化学分析、同位体分析を行った。その結果、海巌における熱水変質とは異なることが明らかになった。すなわち、背孤海盆の火成岩中には揮発性成分が多かったために気泡が多く,空隙率が大きい。そのために変質をうけやすいといえる。火成岩の化学分析結果に基づき背孤海盆における熱水による海洋へのフラックスの見積りを行った。その結果,第三紀中期中新世においてこの熱水フラックスが海洋学火成に大きな影響を与えることが明らかになった。例えば,CO_2フラックスは大きく、背孤海盆における熱水活動が海洋組成,大気組成,気候変動に大きな影響を与えるといえる。黒鉱鉱床や鉱脈鉱床の硫黄同位体組成もしらべて、硫黄のフラックスについても検討をした。低温の水/岩石反応に関して,地下水の分析,地下水組成の変動要因、低温の水からの鉱物の生成に対するバクテリアの役割をついてしらべている。

研究成果

• [文献書誌] 鹿園直建: "熱水フラックスとグローバル海洋組成" 地学雑誌. 104. 16-27 (1995)
• [文献書誌] 鹿園直建: "スーパープリュームがもたらす地球環境変動" 科学. 65. 324-333 (1995)
• [文献書誌] 鹿園直建・本間久英・中田正隆: "交代組織と交代作用のメカニズム" 鉱物学雑誌. 24. 117-123 (1995)
• [文献書誌] Shikazono, N. Utada M. and Shimizu, M.: "Mineralogical featuaes of hydrothermally altered basalt in kuroro mine area, Japan." Applied Geochemistry. (in press). (1995)
• [文献書誌] 水上正勝・加藤晃一・大森幸子: "青函トンネル坑内に析出する金属成分に富む流聖沈殿物" 資源地質. 45. 391-400 (1995)
• [文献書誌] 大日方裕・柳澤文孝 伊藤博: "山形県内陸部における降雪の化学組成の高度別変化" 東北地域災害科学研究. 31. 33-40 (1995)
• [文献書誌] 大日方裕・柳澤文孝 伊藤博: "積雪に対する道路粉塵の影響" 東北地域災害科学研究. 31. 41-46 (1995)
• [文献書誌] 大日方裕・柳澤文孝 小谷卓: "山形県の日本海沿岸および内陸におけるエアロゾル組成の化学的特徴" 東北地域災害科学研究. 31. 47-54 (1995)
• [文献書誌] 吉田知也・柳沢文孝 安部博之・矢野勝俊: "蔵王の着氷と積雪の化学組成" 東北の雪と生活. 10. 66-67 (1995)
• [文献書誌] 河田聡・柳澤文孝・大日方裕 志田惇一・上田晃: "降雪に含まれる硫酸イオンのイオウ同位体比" 東北の雪と生活. 10. 68-69 (1995)
• [文献書誌] 加藤賢・柳澤文孝: "冬期降水の化学組成と気象条件の関係(1)(2)" 東北地域災害科学研究. 32(印刷中). (1996)
• [文献書誌] Shimizu, M., Shikazono, N. and Tsunoda, K.: "Sulphur isotopic characteristics of hydrothermal mineral deposits in the southern Fossa Magna region, Japan : Implications for the tectonic and geologic evolution in the southern Fossa Magna region after Middle Miocene age." Bull. Fac. Educ., Yamanashi Univ.46. 40-48 (1995)
• [文献書誌] Shimizu, M., Schmidt, S. T., Stanley, C. J. and Tsunoda, K.: "Kawazulite and unnamed Bi_3 (Te, Se, S)_4 in Ag-Bi-Se-S mineralization from the suttsu nine, Hokkaido, Japan." Neues Jahrbuch fur Mineralogie, Abhandlungen. 169. 305-308 (1995)
• [文献書誌] 角田謙朗・清水正明: "山梨県乙女鉱床末広脈における鉱化作用" 資源地質. 45. 111-120 (1995)
• [文献書誌] Shikazono, N., Shimizu, M. and Utada, M.: "Mineralogical and geochemical characteristics of hydrothermal alteration of basalt in the Kuroko mining area : Implication for evolution of back arc basin geothermal system." Applied Geochemistry. (accepted).
• [文献書誌] 鹿園直建: "地球化学反応速度と移動現象" コロナ社、千田信編著, (1995)
• [文献書誌] 鹿園直建: "放射性廃棄物と地層科学" 東京大学出版会、島崎英彦、新藤静夫・吉田鎮男編, 389 (1995)
• [文献書誌] 柳澤文孝 山形大学地球環境研究会: "検証・ヒトが招いた地球の危機 データが示す人類環境の現状" 講談社, 267 (1995)
• [文献書誌] "地学事典" 平凡社, (1996)