研究課題
過去数十年の日本の大部分の地域で最も低温を記録した1993年冷夏と、最も高温を記録した94年暑夏の2年続きの夏の異常気象について、大気循環、気温・降水量などの大気の状況と、関連する海洋の状況や積雪・海氷などの状況について、ローカル、グローバルの両方の立場からデータ解析を行うと同時に、大気大循環モデル(GCM)を用いた数値実験により、そのメカニズム解析を試みた。また、この2年続きの異常気象が都市気候や植生(光合成活動)に与えた影響なども、同時に調べた。その結果、両年とも、西部熱帯太平洋の海水温と対流活動は、対称的なアノマリーを示しており、熱帯の大気・海洋系の状況が、何らかの役割を果たしていることを示唆している。しかしながら、特に93年冷夏の状況は、熱帯の大気・海洋系のみならず、ユーラシア大陸・北極域の大気循環が作用している結果が示された。特に異常に発達していた極渦がジェット気流の異常をもたらし、さらに偏西風の波の活動に影響を与えることにより、日本付近に寒冷な気団を南下させる循環場を創り出していた。また、94年には、チベット高気圧の日本付近への張り出しが、下降気流と乾燥した対流圏下層の大気状態を作りだし、乾いた地表面での顕熱加熱が、さらに高温状態を強化したことが明らかになった。さらに、日本付近の海水温も、海流系の長期変動に関連して高温偏差が維持されており、これが大気下層の高温状態の維持にプラスに働いていた可能性も指摘された。大気大循環モデルによる数値実験の結果、ENSOに関連した亜熱帯高圧帯の風(東西成分)を変化させ、この風のアノマリーが、エクマン効果を通して、日本付近の夏の海水温偏差に影響し、さらに気温に影響することが示唆された。筑波大学水理実験センターの圃場での熱収支、炭酸ガス収支と生態学的観測をこの2年で連続して行った結果、冷夏と暑夏の応答して、1年生草本のC3植物とC4植物の分布が変化したことなども報告された。詳しい総合報告は、現在準備中である。
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