研究課題
基盤研究(A)
日本において1993年の異常な冷夏多雨と1994年の異常な暑夏少雨が連続して起こった要因を、詳細なデータ解析による実態解明と気候モデルによる理論的な検討から明らかにし、また気候の長期的な変動の中での位置づけを行った。解析的研究により、1993・94年において熱帯の大気海洋系はおおむね対称的なアノマリー分布を示しており、特に熱帯域の子午面循環が大きく異なっていることから、この両年の異常天候には熱帯からの影響が大きいことがわかった。これに対しユーラシア大陸の積雪量や土壌水分および北極海の海氷は、この両年の天候には直接影響していない。1993年については、熱帯からの影響に加えてシベリアの下層大気における亜寒帯ジェット気流の発生とオホーツク海におけるプロッキング高気圧の発達が日本付近への寒気流入の引き金となって気温が著しく低下したことが明らかとなり、1991年のビナツボ火山の噴火の影響も示唆された。同年の多雨については、日本付近の南北の気温傾度が大きいため8月まで梅雨前線が持続強化していた結果であることが示された。いっぽう1994年については、チベット高気圧の東偏とローカルな地表面の乾燥が気温の上昇を増幅させたことが明らかになった。これらの解析的結果は、大気大循環モデルによるこの両年のシミュレーションによりおおむねを支持されるが、とりわけ西部熱帯太平洋域における海面水温の微妙な空間分布の違いがこの両年の天候に影響していることが示された。長期的なデータを用いた解析からは、1950〜60年代および1980年以降に日本の夏季気温の変動幅は大きいことが明らかとなった。また1980年代以降と1970年代以前では日本の夏季気温に影響する大気海洋結合システムが異なること、および北太平洋におけるこのシステムの十〜数十年スケールの変動がこれに関連していることを示唆する結果を得た。
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