研究分担者 |
村川 英一 大阪大学, 接合科学研究所, 助教授 (60166270)
豊貞 雅宏 九州大学, 工学部, 教授 (30188817)
山本 元道 広島大学, 工学部, 助手 (30274111)
藤久保 昌彦 広島大学, 工学部, 助教授 (30156848)
矢尾 哲也 広島大学, 工学部, 教授 (20029284)
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研究概要 |
船舶においては,荒天回避に失敗した場合や,腐食・経年劣化によって板厚衰耗が生じた場合などには,船体を構成している部材に,過大な荷重による座屈崩壊が発生することがある。座屈崩壊が発生した部材の圧縮側,すなわち大きな圧縮歪を受けた部分では,鋼材が脆化し,破壊靱性値が低下するために,亀裂が早期に発生する可能性が大きくなる。すなわち,大破壊事故の引き金になることが多い。現に,このような原因で大破壊事故を引き起こした大型船舶の例が報告されている。 本研究では,平成7年度〜平成9年度の3年間で,4種類の鋼板を供試して実施した各種の試験結果と,有限要素法による弾塑性大変形解析結果とを統合して,概略以下の成果を得た。 1.軸力圧縮予歪が,鋼材の機械的性質および切欠靱性に及ぼす影響を把握した。 2.1回の座屈崩壊により圧縮側から発生する亀裂を対象に,帯板平滑部材の座屈崩壊後の亀裂発生強度,すなわち,微小亀裂発生限界条件を定量的に把握した。 3.座屈崩壊後,引き続いて負荷されることによる大きな繰り返し圧縮歪により発生する亀裂を対象に,帯板平滑部材およびスチフナ隅肉溶接止端部の繰り返し曲げ荷重下での亀裂発生強度,すなわち,微小亀裂発生強度・破断強度を把握した。 以上により,座屈崩壊部から亀裂が発生・進展し,さらに不安定亀裂に移行して,大破壊事故へと発展することを防止する,破壊管理制御設計法確立の基礎技術が蓄積出来たといえよう。なお,圧縮歪による鋼材材質の劣化(脆化)に関しては,これまでに多くの研究が行なわれてきたが,亀裂発生強度を定量的に把握した本研究成果は画期的であるといえよう。
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