研究概要 |
海洋都市構想の出現やクルーズ客船の建造増加などに伴い,快適空間の創出が強く求められ,これが付加価値の最重要な要因となっている。海洋空間利用構造における快適空間の形成には,温熱環境,視聴覚環境,動的環境などを総合的に評価する感性評価のための手法の構築が不可欠であり,新たに環境設計の手法の確立が望まれている。 本研究では感性設計の応用的研究として,感性情報を処理し快適度を評価するために,空間環境の快適性の概念構造を形容語情報により調べ,計測されると感性情報と概念的感性情報とを関係づけた快適性の評価構造を,ファジィ理論と評価解析法によりモデル化し評価選定システムを構築した。 本研究のためには,温熱環境,視聴覚環境,動的環境の快適度を表す数量化基準の作成および感性評価のための多基準のあいまい評価法を確立する必要がある。温熱環境の快適度評価は人体の蓄熱量を基準に指標化することができることことが分かり,居住空間および暴露環境下における快適性のための人体温熱制御に関する数学モデルを構築し,快適度と快適さの限界条件を調べた。この件については日本造船学会に論文発表を行った。また,動的環境下における人体の応答と快適性を数量的に表わすためには,数多くの被験者による計測が必要となる。このため人体パネルモデルを仮定し,人体の動揺実験計測値によりバネ定数,減衰係数を同定することにより定め,このモデルを用いて数値計算シミューレーションを行って評価基準を決める方法をとった。一方,聴覚環境についてはある程度の基準があるため問題はないが,視覚環境については個人差が大きく,強あいまい問題向きの演算方法を考案することが不可欠である。
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