研究概要 |
超電導磁石(磁束密度:5T)を用いて以下の実験を行った。 (1) 磁化率χ:37.6×10^<-6>emu/gの硝酸鉄過飽和水溶液からの晶出および磁化率χ:56.4×10^<-6>emu/gの塩化鉄融液の凝固に及ぼす印加磁場の影響を測定したところ,いずれの場合にも磁場を印加することによって結晶サイズは磁場は磁場を印加しない場合に比較して小さくなり,その数は多くなることが分かった.これより,凝固および晶出に際して磁場が何らかの影響を及ぼしていることを確認した.また,硝酸鉄の晶出相は45度の傾きを持って配向することも分かった. (2) 磁化率χ:-7.5×10^<-6>emu/gの反磁性体である黒鉛円盤(直径:59mmφ,厚さ:10mm,重量:36.95gf)を5Tの磁場中に吊るしたところ,黒鉛円盤は浮揚した.これより,種々の非磁性物質でも強磁場の下に晒すことによって分離除去ができる可能性があり,分離単位操作としての活用が見出された. (3) 溶融Bi-Mn合金を印加磁場5Tの下で凝固させると初晶相のα BiMnが強磁性物質であるために凝固組織に大きな変化が生じた.この現象を活用することによって傾斜機能材の製造が期待できる. (4) 硝酸鉄水溶液に微細なガラスバルーンを懸濁させた水溶液に5Tの磁場を印加したところ,ガラスバルーンは上方に分離することを観察した.この結果より磁化力差を活用した分離技術の可能性が見い出せた. (5) グリセリン溶液に炭素繊維を分散させ5Tの磁場を印加したところ,炭素繊維は印加磁場方向と平行に配列することが確認できた.このことから,配向を必要とするような複合材の製造プロセスに強磁場を用いることが期待できる. 以上,強磁場印加実験に基づき強磁場利用の可能性が少し明らかになってきた.現在,理論解析および詳細な検討を加えつつある.
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