研究課題
本年度は最終年度に当たるため共同観測は行わず、1997年12月に研究集会を開催し観測結果を検討した。その結果、以下のことが指摘された。(1)樹冠上帯が大きく異なるにもかかわらず、純放射量、顕熱量はほとんど変化しなかった。(2)純放射量の変動が小さくなった原因は、上向き長波放射が落葉樹林で小さくなるため、アルベドが常緑樹林で大きくなる効果が相殺されるためである。(3)顕熱量が落葉樹林でも常緑樹林とほとんど同じ大きさを示したのは、セロ面修正量が低下し大気と樹冠のかなり低い層までが大気との熱交換に関与するようになること、粗度が増加し大気の混合を促進するためと考えられた。また、樹冠からの遮断蒸発特性に関しては、以下の点が指摘された。北海道の観測では(1)融雪期より2月の方が冠雪期間が長いためは多くなり森林全体からの蒸発量は約0.8mm/dayを示し、無視し得ない量となる。(2)この値は、森林のない積雪面から蒸発量の約2.5倍となった。(3)林床の積雪からの蒸発量は0.15-0.35mm/dayであり、遮断量は0.4-0.6mm/dayと推定された。暖候地の十日町では(1)平均遮断蒸発量は2.7-4.2mm/dayに達し、放射収支量の2-3.5倍となった。(2)森林内外の積雪差は主に遮断蒸発によって生じる。また、森林内の貯熱量は無視し得ない大きさになる可能性があり、落葉状態の方が貯熱量が大きくなることが指摘された。
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