研究概要 |
人口120万人前後の青森,秋田,岩手,山形,福島,新潟,富山,石川,滋賀,三重,和歌山,岡山,宮崎及び鹿児島の14県をピックアップし,平成元年から6年までの自殺者について詳細な調査,分析を行なった。6年間の対象数は各県によりばらつきがあり,それが自殺率(人口10万人対)の高低として表れてきている。6年間を通じて自殺率が常に高い県は秋田,岩手,新潟である。逆に,自殺率の低い県は三重,滋賀,岡山である。また,気候,風土,地域の類似した隣接県であっても,自殺率に差のあることが判り,興味の持たれる点である(例えば,秋田と山形,富山と石川,新潟と山形など)。自殺率の高い県の分析によると,高齢者と精神障害者の自殺を減らすことが重要なポイントであることが浮かび上がった。特に,女性では高齢化に伴い自殺者の実数並びに自殺率とも急激に増加する。 全年令層の集計では男性が女性よりも実数は多いが,高齢者群では男女の差はなくなる。自殺企図には時期的な変動があり,殆どの県では12月や1月,2月といった寒い時期は少なく,4月以降9月までは多いという結果であった。自殺の手段としては縊頚が圧倒的に多く,特に高齢者では80%前後にも及ぶ県がある。次に多い手段として,男性は排ガスや飛び降り,女性では入水である。自殺の背景を考察すると,病苦が男女とも多く,高齢者では一層それが顕著となる。しかし,この背後には別の要因があるやに受け止めており,更に詳細な分析の必要性を感じている。40歳代,50歳代の男性では経済的な理由が動機となっている場合が目立つ。 以上がこれまでの調査で得られた結果の概略であり,最終年度には平成7年のデーターを加え,合計7年間について各県の分析を行い全国的な視野で予防手段を考察する。
|