研究課題
基盤研究(A)
乳癌患者数は近年日本で増加しつつあり、治療技術の進歩も伴い、乳癌治療体験を持ち長期に社会生活を送る人々が増えている。乳癌体験は、身体的のみならず心理社会にも患者に大きな影響を及ぼす。本研究は、乳癌患者の経験する心理社会的ストレスを分析し、患者が具体的にどのようなサポートを必要としているのかを明らかにした。そして、患者会などのサポート・グループの日本でのあり方をも検討した。先ず、患者の視点から乳癌経験の全容を明らかにすることを目的に、平成7年8月から9月にかけて、31名の乳癌患者を対象にインタビュー調査を実施した。インタビューは、質的研究手法であるGrounded Theory Approachを用いて分析した。闘病の各時期で対象者が経験する心理社会的問題の内容、病院内に自然発生する同病者による相互支援行動の実態、患者会への興味、乳癌を経験していない医療専門家による支援への認識などについて詳細な知見をえた。対象者は、種々の心理社会的問題について自ら医療従事者に相談することは必ずしも多くなく、理由として主治医への遠慮や、診療時間が限られていることなどが挙げられた。病院内に心理社会的問題の相談窓口の設置を望む意見も多かった。次に、医療従事者側の認識を明らかにするため、平成9年3月に乳腺診療に従事する全国の外科医419名に郵送自記式アンケート調査を施行した。有効回答数は258(有効回答率61.6%)であった。外科医は、患者の身体的諸問題や再発の不安は自らが対応すべきと考えていたものの、周囲との人間関係、経済的問題、ボディーイメージや性生活に関する問題は外科医の責任領域とはあまり捉えていなかった。患者会や患者訪問ボランティア活動については、その情報の中立性などに疑問を持っている外科医が多く、日常診療に積極的に取り入れている回答者は少なかった。最後に、今後の乳癌患者への新たなサポートのあり方について考察を加えた。
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