研究分担者 |
仙波 恵美子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00135691)
米田 悦啓 大阪大学, 医学部, 教授 (80191667)
藤本 豊士 群馬大学, 医学部, 教授 (50115929)
斉藤 尚亮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (60178499)
阿部 寛 東海大学, 医学部, 教授 (40151104)
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研究概要 |
外界からの信号を受けて細胞がそれに見合った応答をするには,細胞膜内反応とそれに引き続いた細胞内変化,さらに核内の遺伝子発現の変化をもひきおこすことが必要である.これら一連の変化の木態を理解するために,細胞膜内蛋白質,膜関連蛋白質,細胞骨格蛋白質,細胞質,核膜孔そして核内蛋白質に注目して各々の遺伝子と蛋白質の発現,およびそれらの変動を光顕と電顕レベルで精査した. 膜ないし膜蛋白として,ギャップ結合のコネクシンと細胞膜カベオラそしてリンパ球表面マーカーのCD38を対象とした.肝細胞のギャップ結合部位での複数コネクシン分子の共存混在,およびその細胞質面の構造変化を免疫細胞化学と急速エッチレプリカ法により検討した.カベオラにはカベオリンとcalreticulin蛋白が局在するが,Gi2aやコレステロールおよびスフィンゴミエリン等これまでカベオラ画分の分子といわれていた分子はin vivoではカベオラに局在しないことを初めて明らかにして,それらの分子とカベオラとの二次的関連と機能的関係解析の必要性を強調した.CD38は細胞内でリアノジン受容体との関連でCa調節に与るcyclic ADP riboseの合成酵素ADP-ribosyl cyclaseの活性と分子構造上高いホモロジーとを持つ.このCD38の遺伝子発現を脳で精査すると,リアノジン受容体の豊富なニューロンではなくグリア細胞にのみ局在した.この局在相異の意義および膜表面蛋白が細胞内で作動する機構について考察した.次に細胞膜裏打ち蛋白数種とアクチン等の細胞骨格との機能関連について共焦点レーザー顕微鏡と免疫電顕法により筋細胞で観察し,既報の分子構築と比較検討した後,セカンドメッセンジャーにより細胞内で作動する3種のリン酸化酵素(protein kinase C.Ca/Calmodulin-dependent protein kinase IV,diacylglycerol kinase)の分子構造と活性特性,それらの遺伝子とタンパクの細胞組織内局在とその機能的変動を詳細に解析した.これらの分子のいくつかは核内に局在することが判明し,それらの機能的意義を検討した. 核移行の分子機構については,核膜孔ターゲッチング複合体を同定し,これが複数の相同分子から構成されること,さらに細胞外刺激で核移行するタンパクの一つ(Statl)は移行にリン酸化を受けることを明らかにした.また,外的刺激によるシグナルカスケード進行の結果として惹起される細胞反応として,既知のimmediate early genes(IEG)である細胞性ガン遺伝子(c-fos,c-jun,NGFI-A等)の多様な発現変動の詳細な解析,および新たなIGE(Arc:actively and developmentally regulated gene associated with cytoskeleton)を脳海馬で見出してそのシナプス可塑性への関与の可能性を検討した.そのうえ,発現タンパクの膜への移行に重要な細胞内小胞輸送機構の理解のためにそれに関与するsmall G-protein結合タンパクのうちrab12に注目して,心房筋細胞ANP顆粒の分泌にこのタンパクが関与することを免疫脂肪化学的に明らかにした.
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