研究分担者 |
富山 俊一 日本医大, 医学部, 助教授 (00094665)
久保 武 大阪大学, 医学部, 教授 (30107031)
神崎 仁 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (00051441)
高坂 知節 東北大学, 医学部, 教授 (80004646)
中井 義明 大阪市立大, 医学部, 教授 (10046998)
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研究概要 |
A. 臨床的研究 1)内耳免疫傷害患者の聴覚と随伴症状の経時的変化を観察,ステロイドに対する反応性より治療的診断基準の作成を試みた. 2)高度感音難聴者に対し,人口内耳埋込み術の際外リンパ液を採取,PCR法により麻疹ウィルス遺伝子の検出を行った結果,多くの症例でウィルス遺伝子が検出された. B. 実験的研究 1)内リンパ嚢に抗原を注入して2次免疫反応を惹起,増殖期(S期)細胞および接着分子ICAM-1の発現を観察した.S期細胞が主に内リンパ嚢上皮下結合織のIgG+細胞の多い部位に認められたことより,内リンパ嚢局所でIgG+細胞が分化すると考えた.ICAM-1は内耳全域の血管内皮細胞,結合織細胞に発現され,内リンパ嚢は内耳全体の免疫防御にも関わると考えた.一方耳感染のない動物ではIgAや分泌型因子が染色されないことより,正常内リンパ嚢は粘膜免疫能を有しないと考えた. 2)免疫傷害内耳の超微観察ではマクロファージ等の細胞が,内リンパ嚢以外の鼓室階膜面にも存在していた.また内耳免疫反応発動以前にフリーラジカルが内耳傷害箇所に出現,ナチュラルキラー細胞は他臓器に比べ遅れて出現した.これらの事象と内耳免疫傷害との関係が示唆された. 3)免疫傷害内耳の蝸牛外側壁ではNa,K-ATPase,connexinの染色性が低下していた.ラセン靭帯,血管条を含む蝸牛外側壁の機能傷害が内耳免疫傷害の一因と考えた. 4)能動感作した動物の内耳に抗原を反復投与した結果,I型アレルギー反応による可逆性の内耳傷害が惹起された. 5)自己免疫疾患モデルマウスにおいて,ABR上聴力閾値の上昇を認めた.血管条にIgM沈着等の変化を認め,自己抗体により血管条の機能が傷害されたと考えた.さらに,モルモットにヒストンを注入する実験より,planted antigenによる内耳血管傷害が起こりうる可能性が示唆された.
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