研究課題
総合研究(A)
トリチウムの環境での動態を解明する目的で、重水素水を用いた野外放出実験の予備実験として、本年度は茨城大学水戸キャンパスにビニールハウスを置き、その中に班員が持ち寄った各種のポット栽培の植物、土壌、ラットその他を入れ、一定濃度の重水素水を水蒸気としてビニールハウス内に24時間連続放出し、放出停止後直ちにビニールシートを除き、その後2〜20日間重水素水の環境での動態を追跡した。実験中のハウス外の気象観察は風向、風速、気温、湿度について測定し、ハウス内については、室温、地温、湿度、蒸散量、蒸発量、植物生理データ及び室内空気中水蒸気中の重水濃度、重水素水素、重水素メタンの測定が行なわれた。ハウス内にはポット栽培の小松菜、トマト、ミカン、カリフラワー、ハツカダイコン、キャベツ等を並べ、さらに水盤には水草、ゴカイを入れて、植物や土壌、水棲生物への重水素水の移動を測定した。また、ラットのケージを入れて、ラット体内への取り込みについても調べた。24時間の放出に使用された重水素水量は1.3リットルで、ハウス内空気中重水素水濃度は2-3時間で約33、000ppmに達し、15時間後までほぼ一定に保たれた。土壌、植物ともにほぼ直線的に重水素水濃度は増加した。15時間後の重水素濃度は高いほうからクローバー(29、000ppm)、カリフラワー、松葉、小松菜、ミカン葉、土壌(表層0-1cmまで)(13、000ppm)、トマト葉の順であり、トマトの実では葉の1/7、ミカンの実ではミカンの葉の1/40(500ppm)であった。植物の葉の重水素水濃度は放出停止後24時間で著しく減少したが、土壌での濃度は僅かにしか減少しなかった。またトマトの実とミカンの実の重水素水濃度は放出停止後20日経過してもほぼ同じであった。これらの結果、重水素分析専用のガスクロマトグラフィーを用いて環境試料中の重水素の追跡が可能であることが判った。
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