研究分担者 |
関根 義彦 三重大学, 生物資源学部, 教授 (40211320)
柳 哲雄 愛媛大学, 工学部, 教授 (70036490)
川村 宏 東北大学, 理学部, 教授 (40169769)
石丸 隆 東京水産大学, 資源育成学科, 助教授 (90114371)
才野 敏郎 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (60126068)
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研究概要 |
本研究では沿岸から外洋への物質輸送過程のなかで,表層から流出する過程に焦点を絞って,それを黒潮の流路変動という外洋からの強制力に対する応答として捉え,その過程を強制力に対する応答が異なると期待される東京湾,大阪湾,伊勢湾の3つの代表的な湾についてそのメカニズムを明らかにし,流出量を定量的に評価することを目的とした。数値モデリング、現場の海洋観測、衛星観測に関する研究者が「比較沿岸海洋学」を軸に共同研究をおこない新しい海洋学の方向性を見いだそうとした。衛星データを取り込んだ物理モデル開発に留まることなく,生物,化学的な現場データを用いて実際の物質の動きを評価することを目指した。 本研究の成果は以下の通りである。 (1)海洋観測結果から、冬季の伊勢湾では、東京湾、大阪湾のように中層から湾外に高濁度水が流出するのではなく、大陸棚斜面に沿って底層から流出することが示された。 (2)ランドサットデータおよびその前後の日に収集された東北大学N-LANDデータベースNOAA-AVHRRデータを用いて、黒潮の流路の時系列変動と湾内から湾外への高濁度水塊の流出パターンを類型化できた。東京湾では湾内水が相模湾へ流出するパターンと房総沖合へ流出するパターンに大きく分類できた。 (3)懸濁物中の非植物成分と植物成分の関係を解析するとともに、表層からの流出分と下層からの流出分の比率について検討できた。衛星画像で捉えられる表層流出パターンによる見積に下層からの流出分をどのように考慮して推定できるかは今後の課題である。 (4)湾内から湾外への沿岸水流出機構の診断モデルを3つの湾の特性を考慮して設計した。夏季伊勢湾の残差流を計算した結果、湾央では上層で時計回り、中層では反時計回りの傾圧の残差循環流が、湾口では反時計回りの順圧の残差循環流が得られた。 (5)20年間の水路部海洋速報を用いて日本南岸における黒潮流路の離岸距離の変動特性を解析した結果、九州沖で発生した黒潮小蛇行の東進とそれに先立つ黒潮流速の増加との関連性が示唆された。 (6)東京湾、伊勢湾、大阪湾の淡水・塩分・DIP・DIN収支を比較しつつ検討することにより、各湾での共通で起こっていること、独自に起こっていることをかなりの程度明らかにできた。
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