インテグリンを介するシグナル伝達機構と細胞増殖・分化の制御

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07308047
• 研究種目: 総合研究(A)
• 研究機関: 大阪府立母子保健総合医療センター・研究所
• 研究代表者: 関口 清俊 大阪府立母子保健総合医療センター研究所, 病因病態部門, 部長 (50187845)
• 研究分担者: 祖父江 憲治 大阪大学, 医学部, 教授 (20112047) ; 佐邊 壽孝 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (40187282) ; 成宮 周 京都大学, 医学研究科, 教授 (70144350) ; 目加田 英輔 久留米大学, 分子生命科学研究所, 教授 (20135742) ; 宮崎 香 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (70112068)
• キーワード: インテグリン / 細胞外マトリックス / シグナル伝達 / 細胞内骨格系 / ラミニン / パキシリン / Rho / HB-EGF

研究概要

インテグリンを介する細胞外基質から細胞内へのシグナル伝達の機構について、以下の成果を得た。1)ヒト胎盤から精製したインテグリンα6β1を用いてファージ・ディスプレーライブラリーを繰り返しスクリーニングし、インテグリンα6β1に親和性を示すペプチド配列を同定した。この配列をもつ合成ペプチドは、インテグリンα6β1とラミニンとの結合を特異的に阻害し、それ自身細胞接着・伸展活性を有していた(関口)。2)培養ヒト胃癌細胞、扁平上皮癌細胞の多くは、インテグリンα6β1の特異的リガンドであるラミニン5のmRNAを恒常的に発現していること、またその発現は発癌プロモーターや増殖因子(EGF,FGF)によって著名に亢進することを見いだした(宮崎)。3)インテグリンとヘパリン結合性増殖因子(HB-EGF)およびCD9が細胞膜上で複合体を形成して細胞間接着部位に局在することを明らかにした(目加田)。4)インテグリンの活性化に働くRho蛋白質の情報伝達経路を明らかにするため、GTP型Rhoへの特異結合を指標としてRho標的蛋白質の探索を行い、2つのセリン・スレオニンキナーゼ(PKNとp160^<ROCK>)、3つの非キナーゼ分子(Rhophilin, Rhotekin, Citron)をPhoエフェクター候補分子として同定した(成宮)。5)インテグリンの集積部位に局在するパキシリンが細胞周期M期で特異的に分解されることを発見した(佐邊)。6)カドヘリンを強制発現させた細胞ではインテグリンを介するコラーゲンへの接着が有意に増大していることを見いだした(小澤)。7)平滑筋細胞の分化形質の維持にラミニンが不可欠であること、また平滑筋特異的な数種類の細胞骨格蛋白質の遺伝子発現にプロモーター領域のCArg配列が関与することを明らかにした(祖父江)。

研究成果

• [文献書誌] Ohashi, H., et al.: "Up-regulation of α5β1 expression by interleukin-6 in rabbit corneal epithelial cells." Experimental Cell Research. 218. 418-423 (1995)
• [文献書誌] Fukai, F., et al.: "Release of biological activities from quiescent fibronectin molecule by conformational change and limited proteolysis by matrix metalloproteinases." Biochemistry. 34. 11453-11459 (1995)
• [文献書誌] Watanabe, G., et al.: "Protein kinase N(PKN) and PKN-related protein rhophilin as targets of small GTPase Rho." Science. 271. 645-648 (1996)
• [文献書誌] Nakamura, K., et al.: "Membrane anchored hepalin-binding EGF-like growth factor and DRAP27/CD9 from a complex with integrin α3β1 at cell-cell contact sites." The Journal of Cell Biology. 129. 1691-1705 (1995)
• [文献書誌] Sabe, H., et al.: "Possible v-Crk-induced Transformation through Activation of Src Kinases." The Journal of Biological Chemistry. 270. 31219-31224 (1995)
• [文献書誌] Yano, H., et al.: "Transacriptional regulation of chicken caldesmon gene: activation of gizzard type caldesmon promoter a CArG box-like motif." The Journal of Biological Chemistry. 270. 23661-23666 (1995)
• [文献書誌] Mekada, E.: "Handbook of natural toxins: Bacterial toxins and virulence factors in disease." Marcel Dekker Inc., 95-109 (1995)
• [文献書誌] Tominaga, T., et al.: "Methods in Enzymology, Volume256" Academic Press Inc., 290-297 (1995)