D-アミノ酸の生化学的機能と代謝

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07308048
• 研究種目: 総合研究(A)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 左右田 健児 京都大学, 化学研究所, 教授 (30027023)
• 研究分担者: 森口 充瞭 大分大学, 工学部, 教授 (70026574) ; 味園 春雄 高知大学, 農学部, 教授 (30027073) ; 三浦 洌 熊本大学, 医学部, 教授 (70093466) ; 今中 忠行 大阪大学, 工学部, 教授 (30029219) ; 市山 新 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90025601)
• キーワード: D-アミノ酸代謝 / 5-置換ヒダントイン類 / D-アミノ酸酸化酵素 / バイオサーファクタント / D-アミノ酸脱水素酵素 / D-アミノアシラーゼ / D-アミノペプチダーゼ / アラニンラセマーゼ

研究概要

哺乳動物、高等植物、並びに微生物におけるD-アミノ酸の機能と代謝の整理的意義を解明することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。D-スレオニンとD-フェニルセリンに作用するアミノ酸脱水素酵素と、5-置換ヒダントイン類をD-アミノ酸に変換する酵素を微生物に見いだし、精製し、酵素化学的諸性質を解明したほか、Ochrobactrum anthropiのD-アミノペプチダーゼ遺伝子をランダム変動処理して温度安定性を向上させることに成功した。また、細菌D-アミノアシラーゼ遺伝子のクローニング、1次構造解析を行い、ブタやヒトのL-アミノアシラーゼとの相同性を明らかにした。細菌の生産する2種の抗菌性バイオサーファクタント、アルスロファクチンとサーファクチンに共通する構造上の特徴を明らかにした。高等植物では、エンドウ芽生えのミトコンドリア画分にアラニンラセマーゼ様活性を見いだした。一方、高等動物では、哺乳類、鳥類の諸臓器におけるD-アスパラギン酸、D-グルタミン酸の存在と分布、ペプチドからD-アスパラギン酸を遊離させる酵素の存在を明らかにした。D-アミノ酸酸化酵素の欠損による尿中へのD-セリンの排泄は、一部、飼料由来であるものの、大部分は内因性のものに基づくことを明らかにした。ラットにおけるチアゾリジン2-カルボン酸あるいはチアゾリジン2,4-ジカルボン酸を介する経路のシュウ酸生成は、存在するものの、関与は僅かであると推定できた。一方、D-アミノ酸代謝関連酵素の原子レベルでの構造解析、触媒機構解析を行い、細菌のアラニンラセマーゼとD-アミノ酸トランスアミナーゼのX線結晶構造解析が完成し、立体構造を解明したほか、D-アミノ酸酸化酵素の紫色中間状態の構造を分子軌道法によって理論的に求め、リガンドのイミノ酸とフラビンとの配向を決めるができ、基質からフラビンへの電子移動の機構を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] M. Morikawa et al.: "A New Lipopeptide Biosurfactant Produced by arthrobacter sp. Strain MIS38" J. Bacteriol.175. 6459-6466 (1993)
• [文献書誌] M. Wakayama et al.: "Cloning Expression, and Nucleotide Sequence of the N-Acyl-D-Aspartate Amidohydrolase Gene from Alcaligenes xylosoxydans Subsp. xylosoxydans A-6" J. Ferment. Bioeng.80. 311-317 (1995)
• [文献書誌] Y. Kera et al.: "Presence of Free D-Glutamate and D-Aspartate in Rat Tissues" Biochim. Biophys. Acta. 1243. 282-286 (1995)
• [文献書誌] Y. Asano et al.: "Mutants of D-Aminopeptidase with Increased Thermal Stability" J. Ferment. Bioeng.79. 614-616 (1995)
• [文献書誌] J. Ogawa et al.: "Purification and Characterization of an ATP-Dependent Amidohydrolase, N-Methylhydantoin Amidohydrolase, from Pseudomonas putida 77" Eur. J. Biochem.229. 284-290 (1995)
• [文献書誌] J. Biochem.: "Structures of Charge-Transfer Complexes of Flavoenzyme D-Amino Acid Oxidase : A Study by Resonance Raman Spectroscopy and Extended Huckel Molecular Orbital Method" Y. Nishina et al.118. 614-620 (1995)
• [文献書誌] K. Soda et al.: "Biochemistry of Vitamin B6 and PQQ" Stereospecificity of Aminotransferases for C-4' Hydrogen Transfer and Enzyme Evolution., (1994)
• [文献書誌] T. Suzuki et al.: "Intracellular Protein Catabolism" Energy-dependent Degradation of a Mutant Serine : Pyruvate/alamine : Glyoxylate Aminotransferase in a Primary Hyperoxaluria Type 1 Case, (1996)