研究概要 |
我々は筑波大学付属病院内に設置した生体磁気計測システムを用い心磁界計測を行った。健常者や心室負荷症例を対象にしたデータの検討では、成人例における両心負荷像の解析(第59回日本循環器学会発表,1995、第34回ME学会発表,1995、第3回ASCVS発表,1995、第34回ISCVS発表,1995)、小児開心術における右室負荷像の解析(第31回小児循環器学会発表,1995)を行った。具体的には心起電力の二次元ベクトルの分布をマップとして提示することが可能となり、心起電力の経時的変化を視覚的に表現できるようになった。それとともに心磁界計測により、開心術による負荷量の変化とその局在計測が可能なことを明らかにした。また刺激伝導系の微小磁場計測(第12回心電学会発表,1995、第10回Biomag発表,1996)を行い、無侵襲に刺激伝導時間の計測が行える可能性を示し、刺激伝導障害の疑いがあるものに対し、心磁計測がスクリーニングとして行えるようになる可能性を示した。その他、心磁情報と体表面電位図の比較(第10回日本生体磁気学会発表,1995、第70回日本医科器械学会発表,1995、第35回ME学会発表,1996)を行い、特に接線方向心磁界計測が心電図に比べ、より狭い計測範囲で電流ダイポールの局在を指摘できることを示した。健常者の心磁界測定結果についてはすでにその第一報の論文を発表し、接線方向心磁界計測により心起電力の評価が容易に行えることが明らかにした。また、さらなる微小磁気を計測するために新たにいくつかの改良をシステムに加え、その結果、高頻度に胎児心磁の計測に成功した。この解析により、胎児の自律神経系の発達の評価、胎児不整脈の診断、さらには出生後の新生児の予後の予測といった、従来の検査法では不可能だった知見を得られるようになった。
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