研究分担者 |
貞方 昇 北海道教育大学, 教育学部函館校, 教授 (20116594)
平井 幸弘 愛媛大学, 教育学部, 助教授 (30181134)
鹿島 薫 九州大学, 理学部, 助教授 (90192533)
福澤 仁之 東京都立大学, 理学部, 助教授 (80208933)
三瓶 良和 島根大学, 総合理工学部, 講師 (00226086)
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研究概要 |
本研究の趣旨に沿って,平成7年度には札幌で研究集会を開きサロマ湖および網走湖で現地調査を行い,また,平成8年度には浜名湖で研究集会と現地調査を行った.平成9年度は最終年度として山陰の神西湖畔でまとめの研究集会を開催し,関連分野の研究も含めて29題の成果発表があった.詳細は汽水域研究センター発行の「LAGUNA(汽水域研究)第5号」に掲載予定である. オホーツク海に面したサロマ湖では,砂州の人工的開削による水質変化が珪藻分析によって明瞭にとらえられ,それが底質と低棲生物にも影響を及ぼしていることがわかった.また,網走湖においては網走川下流部(流出河川)の浚渫によって高塩分水の流入量が増し,塩分躍層を押し上げ還元的底質環境が拡大したことが底質コアの地球化学的分析から明らかになった.さらに,網走川の湖への流入部に形成されたデルタの微地形が,完新世後期の海面変動に呼応して変化していることもわかった. 浜名湖でも15世紀末に起こった今切口開口のイベントが珪藻分析によって明瞭に記録されていることがわかり,これによって底質環境も大きく変化していることが明らかになった.また,このイベントは音響深査によって判明した湖北部の異常地形とともに1498年の東南海地震に関連すると考えられ,変動域の沿岸潟湖の環境が構造運動に強く影響を受ける場合があることが実証された. 宍道湖,中海,神西湖など,山陰の沿岸潟湖では潮位差が小さいことから完新世の海面変動記録が堆積物によく残されていると期待されたが,集中豪雨や台風による気圧変化,季節風による水位変化など短周期の気象変化による環境変動が大きく,この影響が底質の高精度分析を行う際に各項目にどのように現れてくるか今後の課題として残った. 本研究ではまた,現地調査を通じて,海跡湖堆積物から高精度に環境変化を読みとるための様々な調査技術や分析方法についても検討された.これらについてはさらに改良をした上で,調査研究の手引き書としてまとめる予定である.
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