研究分担者 |
中沢 仁 帝京大学, 文学部, 講師 (60246006)
永瀬 英司 帝京大学, 文学部, 助教授 (30217997)
藤崎 春代 帝京大学, 文学部, 助教授 (00199308)
山本 豊 帝京大学, 文学部, 助教授 (40134423)
深田 芳郎 帝京大学, 文学部, 教授 (50199163)
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研究概要 |
本研究は,一般に,生体の情報処理行動を,特定の時点で与えられている外的刺激情報と主体の側の積極的な情報の取り込みの活動との相互作用を通して,すでに先行経験によって生体に蓄積された情報・知識を利用しつつ成立する過程として捉えようとする.そこで,動物,ヒトの健常者,脳損傷者などを被験対象として,それぞれの行動水準に応じて,情報の意味レベルを変化させて情報取得に当たっての主体の側の情報処理操作が可能な課題状況を設定して,情報処理行動における成立と崩壊の過程を比較考察することによって,信号/記号系の形成に係わる条件を明らかにしようとした. 1)まず動物の情報処理行動の実験的分析では,ラットを用いて,反応の結果を明示するような信号刺激の産出状況での弁別行動の解析から,求められる行動に応じて情報取得の様態も変化する可能性が示唆された.2)健常成人における視覚的図形認知過程の研究では,窓を通して図形を観察する視野制限状況での図形の変容を研究した.主な結果として,能動的に窓を移動させて図形を走査する条件と往復運動する窓を通して観察する受動条件との比較では,受動条件で図形の過大視が顕著であったのに対し,能動条件では大きさの変容は少なかった.3)比較的若年で発症し高い知的水準が保たれている語音認知障害の脳損傷者に対して,言語音,非言語音の系列処理について復唱課題,照合課題など種々の実験的検討を行った.その結果,語音系列認知においては,語音処理速度と先行の語音保持過程との2つの情報取得過程との相互作用がかかわりあうこと,さらに非言語音処理に加えて主体の側に保持されている言語音固有の表象過程が関与していることが明らかになった.上記の諸結果は,生体の情報処理過程において,いずれも主体の側の積極的な情報の取り込みの過程ないしは蓄積された情報が重要であることを示唆している.
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