本年度の研究は、大きく二つの部分に分かれる。第1は実験的な研究、第2は社会調査的な研究である。 まず第1の研究は、コミュニケーションの効果に関するもので、リスク・コミュニケーションが、従来の説得的コミュニケーションに比べてどのような効果の違いがあるかを、実験的に検討することを目的としている。用いる題材は、原子力発電である。 大学生を被験者として実験した結果、リスク・コミュニケーションは、説得的コミュニケーションに比べて効果のあることが判明した。すなわち、最終的な態度変化(社会的受容)にはそれほど大きな差はなかったが、それに至る過程で、認知・感情的変化(特に信頼性)に差があることが分かった。またその効果は、コミュニケーションの受け手だけではなく、送り手にも及ぶことが判明した。 第2の研究は、喫煙行動を素材として、その効用性と危険性を人々がどのように認知し、それに対応した行動をとっているかを、社会調査によって明らかにするものである。対象者は、日本の大阪市、中国の北京市、アメリカのロスアンゼルス市の有権者である。 またそれに関して、客観的には等しいリスクであっても、その数値的表現法によってリスク認知がどのような影響を受けるか、さらに、客観的にどれほどのリスクがあれば、人々は警告表示を望むのかについても検討した。
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