研究課題
一般研究(A)
平成7年度は本研究の第1年目にあたり、九州各県出土の弥生鉄器資料の収集に努めた。主として(1)1992年度以降発行の報告書から新資料約2000点を抜き出し、個々の資料ごとにカード化して、データベースに入力する作業を実行した。予測を遙に上まわる資料の多さで、他の研究調査機関所蔵の報告書はほとんど手がつけられず、来年度以降に継続の予定。また、データベースも来年度画像入力可能な新ソフトを導入して入力しなおすことにした。(2)各地の研究機関における現地調査で既出資料の補正や新出土資料を調査して、とくに前期〜中期の鋳造鉄斧資料が増加し、初期の鉄器生産が輸入鋳造鉄斧の破片を再加工した段階から、鋳造鉄斧片を集めて錬鉄や鋼鉄の鉄素材に変える段階へ移行する設定が可能になった。(3)中国・朝鮮半島の鉄器との比較研究は鉄製武器の資料を中心に、その系譜関係を明らかにすることを実行した結果、弥生終末期の鉄刀には中国製の刀身に日本風の拵えにするため、環頭を折取ったものがあり、これが古墳時代の直刀の起源にせまる資料として位置づけることが可能になった。(4)弥生鉄器の金属学的調査は専門分野の研究者に依頼しているがいまのところ結果は得ていない。(5)九州弥生鉄器資料の膨大さからみてこの地域の鉄器化が予想より早く進展したことがわかってきたが、地名表はまだ完成できず、各地の研究者の協力が不可欠になってきている。