研究課題
昨年度に引き続き、中部・関東以北各都県の弥生時代鉄器出土地名表の作成と鉄器資料収集(鉄器実測図の収集)を実施した。その方法は(1)平成8年度までに刊行された発掘報告書から弥生時代鉄器資料を抜き出して、遺跡カード、鉄器カードに写し、出土遺構ごとにデータ・ベースに入力すること、(2)各都府県の埋蔵文化財センターや教育委員会や研究機関において、近年の出土資料、未発表資料や報告未記載資料の調査である。これらは、実測図の作成、写真撮影等をおこなって同様のカードにまとめ、入力する。(3)平成8年度に刊行された報告書から西日本の鉄器資料を抽出してカード化し、補遺とする。本年度の研究成果をまとめてみると、(1)弥生時代における鉄器の普及の北限がほぼあきらかになったことで、新潟県北部〜群馬県〜栃木県〜宮城県仙台湾を結ぶ線の以南である。(2)各地域ごとに鉄器化の進展状況が異なり、中部地方の内陸部(長野・群馬)では後期以降鉄器化が進展するのに対して、東海地方は出土鉄器数、遺跡数、鉄器種類とも極めて少なく、進展しない。この地域の特異性か検証すべきである。(3)鉄器生産工房が東海地域まで明らかになったが、どこまで遡るか、また関東地方の鉄器が西方からの移入品か自家製が問題である。(4)大阪・大竹西で鋳造の鉄剣が出土し、朝鮮製か国産品か、弥生時代の鉄器鋳造否定説を再検討する、日本の鉄技術史上重大な問題を提起することになった。