研究概要 |
今年度は,前年度に引き続き,研究の基礎を固めるために,(1)諸言語の資料,データベースの作成,(2)前置詞などの文法形式の記述的研究,(3)基礎理論的考察の3点を中心に研究をすすめた。 (1)諸言語の資料の収集,データベースの作成: 前年度に引き続き,諸言語における空間の命名,概念分類に関して調査を行った。特に,日本語,英語をはじめ,韓国語,中国語,ベトナム語,タイ語,ロシア語,クロアチア語,ブルガリア語,ギリシア語,スロベニア語,イタリア語,スペイン語,フランス語,ドイツ語などに関して実例を収集した。 (2)文法形式の記述的研究: 前年度に引き続き,英語,フランス語の前置詞,日本語の形式名詞の用法を調査し,理論化の準備をはじめた。具体的には,上(うえ,かみ,あたま)の用法とそれに対応する言語形式(英:up,on,above,仏:sur,au-dessus),下(した,しも,もと)の用法とそれに対応する言語形式(英:under,below仏:sous,en-dessous)について詳細な記述を行った。また,特に日本語の助詞「に」と「で」について,その構文的・意味的特徴を明らかにした。 研究成果の一部は,研究分担者の個々の論文として,紀要などに発表された。 (3)基礎理論的考察: 前年度に引き続き,理論的問題として,空間の認識,分化的な空間の形成(例:日本的空間の形成),空間のメタファー化と表現の多様性について,心理学,人文地理学の専門家の協力をあおぎながら,言語の問題を検討していった。これらの研究を積み重ねてみると,言語における空間表現の問題は,単に対象の位置決定の問題にとどまらず,言語外の物理的・生理的・心理的性質(重力,場,強度,質量,支配・被支配関係など)が複雑に絡まっていることが理解された。 (4)研究成果公表の方法について: 今までの研究をふまえて,次年度に向けて,研究成果の公表形態について準備をはじめた。シンポジウムおよび報告書の出版,電子化データの公表の仕方を議論した。
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