本研究の目的は、国際倒産法に関する網羅的研究を完成させ、一つの新しい体系を構築することにある。 本年度は、その第一歩として、国際倒産に関連する国際私法学、民事訴訟法学の一般理論を整理しつつ、基礎理論に関する議論を通じて、次年度以降の研究の土台を形成することを目標とした。各自の研究を前提とした数度にわたる研究会を通じて、実りある議論をすることができた。特に、これまで国際倒産についてともすると民事訴訟法の側からのみからする議論がなされていたが、そのいくつかは国際私法学における一般理論と整合的でないことが明らかとなった。 比較法的調査については、本年度は英米法を取り上げた。特に、国際倒産事例を多くかかえるアメリカ合衆国の裁判例についての研究は、国際倒産状況下での実際の利害の対立の現れ方を把握する最も有効な方法であり、事実、様々な利益状況を把握することができた。 また、日本における現実の国際倒産事例に関する基礎データの収集の努力も行った。国際倒産に関しては、特に日本では判決の形にならないものが多く、関係当事者からの聞き取り調査などが必要となる。本年度はまだごく一部の調査しかできていないが、それでもこれを積み重ねてゆくことが重要であると考えている。
|