研究概要 |
陽子崩壊p→νK^+を水チェレンコフ装置で検出する方法は以下のとおりである.酸素原子核中の陽子が消滅したことによって作られる励起された窒素原子核からのガマン線を検出する.次に崩壊の際,原子核から飛び出てくるK^+が崩壊することによって生じるミューオンを検出し,さらにミューオンの崩壊から生じる電子を検出する.このガンマ線,ミューオン,電子の信号の間には,平均として12ナノ秒,2.2マイクロ秒の時間差がある.この遅延3重コインシデンスを取ることにより,大量の大気ニュートリノのバックグラウンドを取り除くことができるのである. 本年度は,特に平均12ナノ秒の時間差があるガンマ線とミューオンの信号が実際に水チェレンコフ装置で検出可能かどうかを調べるため,ガンマ線とミューオンが発するチェレンコフ光をシュミュレートする人工光源を製作した.現在全ての部品が納入され,最終予備的な組立を行い,テストを行っているところである.レーザーから出力される光の安定度をモニターするPINフォトダイオードのシステムも完成し,順調に作動することのテストを完了した.本装置によるシミュレート光をカミオカンデ装置に入射するのは,平成8年度始めに神岡観測所に運搬して行う. カミオカンデ装置によって得られた観測データを使って遅延チェレンコフ光を検出する解析ソフトウエアの準備を進めてきた.平成8年度に上記シミュレート光のデータ及びカミオカンデで取得したデータの解析に応用する予定である.
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