研究概要 |
本研究の目的は、希土類原子波動関数のパリティ混合度を広範囲の同位体にわたり測定し、電弱標準理論を越える各種理論モデルの検証を行なうことにある。平成7年度では、リング色素レーザ系、長寿命原子線発生炉及び精密電磁場印加装置を製作し、総合試験を行なった。平成8年度では、レーザ装置の波長可変範囲を拡張すると同時に電磁場・レーザ偏光反転制御CAMACインターフェイスを製作し、制御ソフトウェアを整備した。同時に、コンピュータ検索の結果得られたSm,Pr,Tm等の多くの準位に対して、超微細構造や同位体シフト、Zeeman・Stark効果の系統的な測定を開始した。 上記の研究経過を基に、平成9年度の研究実績及び得られた結果は以下の通りである。 1.色素レーザ装置を赤外波長域をカバーするチタン・サファイアレーザ装置に変換し、ヨウ素分子の回転遷移を用いて、波長絶対値を較正した。 2.ルビジウム(Rb)原子D2線の飽和吸収分光により超微細構造線を分解し、周波数変調分光法を用いてその線の中心にレーザ周波数を安定化させるシステムを構築した。その結果、周波数絶対値のドリフトを数100MHz/hから0.7MHz/hに抑えることに成功し、パリティ非対称度本測定に向けて大きく前進した。 3.可視及び赤外波長域のレーザ光を用いて、Smの多くの近接逆パリティ準位に対して非対称度本測定のための基礎分光データを集積した。その結果、通常の準位に比べて非常に大きなStark分岐が観測され、得られたテンソル分極率の同位体依存性が世界で始めて見出された。 4.得られた研究成果を、フランス・パリで開催された実験専門家会議(Workshop on Parity Violation in Electron-Hadron Electroweak Interactions,October(1997),Paris)で報告した。
|