研究概要 |
本研究の目的は、希土類原子の近接逆パリティ準位対を対象にして、弱い相互作用に起因する準位のパリティ混合度を広範囲の同位体にわたり測定し、電弱標準理論を越える各種理論モデルの検証を行なうことにある。平成7年度から9年度にわたる研究成果は以下の通りである。 1.新たに購入したリング色素・チタンサファイアレーザ系を整備し、可視から赤外波長域にわたる波長絶対値を較正した。更に、Rb-D2線の飽和吸収分光及び周波数変調分光法を開発し、その信号によりレーザ周波数絶対値のドリフトを数100MHz/hから0.7MHz/hに安定化することに成功した。 2.新たに大型真空槽、長寿命原子線発生炉、精密電磁場印加装置、及び電磁場・レーザ偏光反転制御CAMACインターフェイスを製作し、制御ソフトウェアを整備した。特に、原子線の持続時間を従来の約20倍(70時間)に改善した。 3.希土類原子準位の全データをコンピュータに入力して実験に適した近接逆パリティ準位対を検索し、原子波動関数の第1原理に基づく高精度計算方法を確立した。 4.原子線に互いに直交する静電場・静磁場を印可し、偏光レーザを照射してSm,Pr,Tm原子の多くの近接逆パリティ準位対に対して、超微細構造・同位体シフト及びZeeman・Stark効果を系統的に測定した。特に、Smの準位の中に非常に大きなStark分岐を有するものを観測し、そのテンソル分極率に明瞭な同位体依存性が存在することを世界ではじめ見出した。 5.上記の研究結果を、日本物理学会の口頭発表16件、国際会議の発表4件、学術雑誌の論文8編、及び広島大学理学部の修士論文5編と博士論文3編として公表した。
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