電子局在の物性を含む量子ホール効果の総合的実験研究を行ない、以下に述べる結果を得た。 1.量子ホール効果.(1)量子ホール効果のブレークダウン:(A)電子移動度が異なるGaAs/AlGaAsヘテロ構造からバタフライ型ホールバ-とその測定部と同じ矩形ホールバ-を作製し、ブレークダウン臨界電流はバタフライ型ホールバ-では幅に比例し、矩形ホールバ-では移動度が高い試料ほど幅に対して飽和する特性が強いことを発見した。(B)バタフライ型ホールバ-の中央部の幅20μm、長さ5μmの短チャネルで測定したブレークダウン臨界電流は通常バタフライ試料の測定結果と一致することを確かめた。(C)コルビノ電極試料で定電圧法でブレークダウンを測定し、バタフライ型ホールバ-と一致する臨界電場を得た。(D)バタフライ型ホールバ-の対角抵抗の活性化エネルギーのホール電場依存性を測定し、活性化エネルギーはホール電場の増加と共に直線的に減少することを発見した。(2)量子化ホール抵抗の高精度測定:測定部幅1mmの巨大バタフライ型ホールバ-と測定部幅15μmのバタフライ型ホールバ-のホール抵抗の高精度直接比較測定を行い(本年度購入したHe3プローブにテフロン被覆高絶縁導線を配線して使用)、臨界電場近傍でホール抵抗の減少傾向が認められたが、精度0.01ppmでは明確な電場依存性は確定できなかった。 2.電子局在.(2)低電子濃度2次元電子系の基底状態:(A)Si-MOSFET2次元電子系絶縁体相の対角抵抗の活性化エネルギーの磁場依存性と磁場方位依存性を測定し、3角格子基底状態は強磁性相で垂直磁場中の3体環交換相互作用を仮定して磁場と方位依存性が説明できることを発見した。(B)GaAs/AlGaAs界面低電子移動度2次元電子系を用い、ランダウ準位充填率1/2の対角抵抗率はlogTの温度依存性をもち、複合フェルミオン間相互作用による可能性を議論できた。
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