電子局在の物性を含む量子ホール効果の総合的実験研究を行ない、以下に述べる結果を得た。 1.量子ホール効果.(1)量子ホール効果のブレークダウン:(A)電子濃度と電子移動度が異なるGaAs/AlGaAsヘテロ構造からバタフライ型ホールバ-(電流電極間長約3mm、電流電極幅400μm、測定部は長さ600μmで幅が異なる)を製作し、対角抵抗の活性化エネルギーE_Aのホール電場F_Hに対する依存性を測定し、E_A=hω_c/2-ael_BF_H(l_B:基底ランダウ軌道半径、a:定数)と表され、量子数i=2、4では、aは試料に依存するが電子濃度と移動度によらず、34.5±4.5であり、ブレークダウン電場における活性化エネルギーの値は電子移動度に反比例することを発見した。(B)コルビノ電極試料で定電圧法で測定した対角抵抗の活性化エネルギーのホール電場依存性も同様であった。(2)量子化ホール抵抗の高精度測定:(A)測定部幅1mmの巨大バタフライ型ホールバ-と測定部幅15μmおよび35μmのバタフライ型ホールバ-の量子化ホール抵抗の高精度直接比較測定を行い、電流に対して量子化ホール抵抗が急激に減少する現象を発見した。量子化ホール抵抗崩壊ホール電場は、ブレークダウン臨界電場の80%である。この現象を解明するため、電子濃度と電子移動度が異なる試料と、本年度購入したヘリウム容器内で使用する極低温電流比較変圧器を製作しつつある。 2.電子局在.低電子濃度2次元電子系の基底状態:(A)Si-MOS 2次元電子系の絶縁相の活性化エネルギーの面内磁場に対する直線的増加と高磁場での飽和、および垂直磁場に対してB_⊥【approximately equal】0.6N_sφ_0および1.1N_<sφ>【approximately equal】(φ_0=h/e)で極小値をとる振るまいは、異なる谷の状態を偽スピンが異なる状態とみなして、r_s【approximately equal】8近傍でウイグナ-固体を形成する電子間の交換相互作用により定量的に説明できた。(B)Si-MOS2次元電子系の金属・絶縁体転移領域を含む低電子濃度領域の電気伝導率に対する磁場効果の方位依存性を測定した。(C)GaAs/AlGaAs界面2次元電子系のランダウ準位充填率1/2の対角抵抗率の温度依存性を測定し、理論家の協力を得て、複合フェルミオン間相互作用によって定量的に理解できることを明らかにした。
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