研究概要 |
電子局在の物性を含む量子ホール効果の総合的実験研究を行ない、以下に述べる結果を得た。 1. 量子ホール効果:昨年度発見し,下記に要約するGaAs/AlGaAs2次元電子系の量子化ホール抵抗の崩壊と量子ホール効果のブレイクダウンの実験結果は試料の均一な性質であることを確認した。(1)対角抵抗率が電流とともに増加する電流領域でホール抵抗は高精度で量子化される。(2)量子化ホール抵抗が崩壊する電流を越えても対角抵抗率の増加は変化しない。(3)さらに高電流値で対角抵抗率の急激な上昇(ブレイクダウン)が現れる。これらの現象は、高ホール電場によって、無散逸の量子ホール状態からホール抵抗値は量子化値にほぼ等しい散逸状態が出現し、量子ホール状態と散逸状態とは電流方向に沿って1次元的に交互に現れるとして説明した。この現象論は、高ホール電場によってホール電極間の量子ホール状態が消失するとき量子化ホール抵抗は崩壊し、さらに高いホール電場で散逸電子系の対角抵抗率が急激に増加する、と説明する。本現象は量子ホール効果の基楚データーとして重要であり、引き続き測定を継続している。 2. 分数量子ホール効果:GaAs/AlGaAs界面低電子濃度2次元電子系を用い、ランダウ準位充填率1/2の対角抵抗率とホール抵抗率を23Tまでの磁場と50mKまでの低温度で測定し、50mKにおける対角抵抗率の逆数はゼロ磁場の伝導率に比例する結果を得た。これを複合フェルミオンの伝導率とし、その温度依存性を最近の永長と福山の理論を用いて解析して、合理的な結果を得た。 3. 電子局在:金属-絶縁体転移を示す高移動度Si-MOSFET2次元電子系の対角抵抗率の温度依存性と磁場方位依存性を測定し、電子液体状態の伝導とスピン自由度との相関を明らかにした。
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