強磁場下2次元電子系の局在と量子ホール効果の総合的実験研究を行ない、以下に述べる結果を得た。 1. 整数量子ホール効果.(1)電子濃度と移動度が異なるGaAs/AlGaAsへテロ構造ウエハから、測定部幅を10〜200μmで変化させたバタフライ型ホールバーを製作した。1K以下の低温度で散逸状態のブレイクダウン電流は試料幅に比例し、ブレイクダウン電場は磁場の3/2乗に比例するが、絶対値はランダウ準位間遷移で期待される電場の約1/10であることを明らかにした。(2)コルビノ円盤電極による測定はこの結果と一致した。(3)対角抵抗率の活性化エネルギーのホール電場による減少特性を測定し、ブレイクダウンの機構に関連する知見を得た。(4)巨大バタフライ型ホールバーを基準試料にして、バタフライ型ホールバーの量子化ホール抵抗を高精度で直接比較測定し、ブレイクダウン電場より低い電場で量子化ホール抵抗の崩壊を発見し、散逸状態のブレイクダウンはホール抵抗の量子化とは直接的関係を持たないことを説明する現象論模型を導いた。 2. 複合フェルミオン.GaAs/AlGaAsへテロ接合2次元系のランダウ準位充填率1/2における対角抵抗率の逆数から複合フェルミオンの電気伝導率を求め、20mK〜1.5Kの温度領域で測定した温度依存性を複合フェルミオン間相互作用による量子補正項として解析して、不合理でない結果を得た。 3. 電子局在.(1)Si-MOS反転層2次元系絶縁体相の対角抵抗率の活性化エネルギーの面内磁場に対する直線的増加と高磁場での飽和ならびに垂直磁場に対する振動現象を発見し、ウイグナー固体を作る電子間の交換相互作用により説明した。(2)高電子移動度Si-MOS反転層2次元系の金属-絶縁体遷移領域近傍で抵抗率の電子濃度、温度および磁場依存性を測定し、金属伝導においてスピン自由度が重要な役割を果たすことを発見した。
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