光電子分光のエネルギー分解能向上を目指して、「二次元電子エネルギー分析器」の設計、発注を行い、現在、取り付け調整を行っている。 上記の改造と並行していくつかの興味ある物質について高分解能光電子分光測定を行い以下に示すいくつかの知見を得た。 1.Bi_2Sr_2CaCu_2O_8超伝導体の超伝導ギャップの開閉とその異方性を直接観測した。ギャップの大きさは最大で50meVでdx^2-y^2の対称性と良く合致する異方性を示す。 2.低次元有機伝導体(DCNQI)_2Cu(DCNQI=dicyanoquinonediimine)の金属-絶縁体転移に伴う電子構造の変化を高分解能光電子分光で直接観測した。その結果、転移は電荷整列に伴うパイエルス転移とモット-ハバ-ド転移の協力現象であることを見出した。 3.セリウム化合物CeB6の極低温高分解能光電子スペクトルを測定し、近藤ピークの結晶場分裂によるサテライト構造を初めて観測することに成功した。このことは、セリウム化合物の電子状態を理解する上で近藤モデルが良い近似になっていることを示している。 4.特異な金属-絶縁体転移(Verwey転移)を示すFe_3O_4についてその転移近傍での精密な光電子スペクトルを測定し、フェルミ準位上でのギャップの開閉を観測することに初めて成功した。
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